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ホメオスタシスな6adContest

相模峰の雄峰見過ぐし忘れ来る妹が名呼びて吾を哭し泣くな(万葉集より)


大山は丹沢大山国定公園に属する山。東京近郊でありながら日本百名山の一つで古くから山岳信仰の対象である。今回はこの山にトライする。私の登山人生で一番高い山は根子岳(標高2,207m)で次が戸隠山(標高1,904m)。はっきりって大山なんて余裕、そう思っていた時期が私にもあった。

 


時は2020年7月某日。その日は土曜日で午後まで学校。そのあとの希望制講演会にも入会していた。学校が終わったのは午後五時。登山口には8時についた。夕方までの雨で木々は濡れており時折吹き乱れる風に流され襲いかかってくる。秦野で合流した友人はなにか棒で杖をついて登っていたが私は杖にはこころもとない棒の集合体しかない。友人は「遅くなったからだしこれはお前の制だ」というが天気予報を根拠とする中止の提案を無視しておいてどの口がいうか。そう言ってやりたくなったが「国立に進学したいからすまんね」と言うしかなかった。無論相手も国立志望らしいが私としてはもうちょい勉強しなはれと意見している。無論奴は人の意見をまともにきく奴ではなく、山に登る前に先客確認だけはしておけよと言われていたのだが天気予報的に誰もいないでしょと無視。やれやれである。

ただこうして自分が付き合わなければ彼はきっとさらに趣味にのめり込んで身を滅ぼすだろうという危惧から、協力せざるをえない。まったくもって人騒がせである。

ここでなぜ我々が夜中の登山に挑戦しているか述べておこうと思う。ズバリ、アマチュア無線のコンテストに参加する為である。はて、何ですかそれはと言う読者の為に少々説明すべきかも知れないが、小説と言うものは設定は語らないものなのだ。話が進むにしたがって人柄から考え方までなにもかも見えてくる。是非ともここでは難しい語句は置いといてほしい。

さて、山頂についた所で一筋の光を見ることとなった。ここで思い付くのは3つ。一つ目は天文家、二つ目は生物観察である。しかし、両者ともあり得ないのだ。まず、前者は曇りの日にいるはずがない。では後者はどうか。無論、昆虫採集のライトトラップは除くが普通、夜半の生物観察は赤色ライトを用いる。私などは赤色下敷きを切り取ってライトにテープでとめている。ライトトラップも基本は白い布に光をあてそこに虫を集めるという手法をとる。

つまり正解は三番のアマチュア無線家である。こう言うとき基本は帰ることになるのだ。電波をあまりにも近い距離で出しあうと混信しあってしまい、何も聞こえなくなるのである。先取優先のお決まりである。だから登山口でアンテナ出して確認しろって言われてただろ。まったく何が楽しくて鉛バッテリーを担いでアンテナ両手にずぶ濡れになりながら山登りしたのか。全部神社に奉納して帰ってしまいたいとも思ったが、そういえば帰る手段がないらしい。バスも大山ケーブルも5時には終わっている。どうころんでも始発までは山で過ごすことになるわけで。どちらにせよお話しなければということで。


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そんなこんなでこの日は終了。お前が希望制講習会とったのが悪いだの先客確認しないのが悪いだの喧嘩になり、クラブ局は解散した。

 

 

 

 

 

――fin――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

となっても文句なしなのだが、何故か運用させてもらえることに。近い周波数は避けて被ってしまったらずらしましょうとのこと。

優しい方で良かったなーといった話になるも同時に私はコンテスト終了まで帰れないことが決定しそれはそれで落胆。前日に課題を仕上げて寝不足。ここで徹夜運用は本当にきつい。まったく、山頂でランタン出してやろうなんていうアホなこと言ってた人はどうするのか。雨で紙なんか広げられねえぞ。やっといて良かった。本当に奴の言うことは信用ならんなあ。

 

大山での無線運用は二回目で一昨年の同じコンテストでも運用した。学校のクラブ局は期末テスト直後に当たるため顧問の教員が忙しいので不参加。自分たちで局をおったて初のコンテスト参加の場所として大山を選んだ。いわば約束の地。中学一年で従事者免許をとった私は何人か学校の同級生を勧誘し免許を取らせた。今日の彼もその一人であるが、彼はすぐに私を追い抜いてしまった。何と言うか、これで受験失敗されたら責任感じてしまうなと思う原因でもある。


とはいえ徹夜運用は今回が初めてで、装備も二年前とはまったく異なる。ハンディー機しかなかったあの頃と比べ彼はHF機を二つほど手入れアンテナも車載用のものから馬鹿デカイものになった。バッテリーも鉛バッテリーとリチウムバッテリーあわせて三つ。本当にどうかしている。

十時過ぎから運用し局を稼いでいく。交信数と交信できた都道府県数がかけ算で評価される方式となっており交信の数だけでなく都道府県数も重要である。今回参加するコンテストは比較的長距離に飛びにくい周波数を使うことになっており都道府県数はどこの無線局も稼げない。つまり交信数が多ければ有利といえる。他のコンテストに比べて根気の占める割合が高いのである。そしていつもより眠気の割合も高い。



朝になってクラブメンバーが二人来たり3局目が登頂してきたり、それだけは覚えているが半分寝てたためあまり覚えてない。登山者に写真を撮ってくれと言われて撮ったら「実験ですかお疲れ様です」と言われた事くらいしか覚えていない。やっぱり白衣着てればなんでも実験と思ってくれるのだなと「ありがとうございます」とだけ言っておいた。


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帰りのバスでゆっくり寝られたのでバスに乗り遅れた彼の話はまた今度にしよう。